第19章 お家に帰るまでが任務
「ソイツに触ってんじゃねェ」
声のした方を見れば目の前にいたのは不機嫌オーラ前回の高杉さん。
「やっとお出ましか。もう少しで楽しめたのになァ?」
厭らしく嗤う敵を睨みつけ、はだけた着物を急いで直す。
本当に来てくれた。
思わず涙が込み上げる。
嬉しい反面、自分の所為で高杉さんを危険な目に合わせてしまう羽目になった罪悪感でいっぱいだった。
高杉さんはつかつかと私たちの方へ歩き出すが、
「動くな!コイツが大事ならそのまま武器を床に置け!」
『こんな奴らの言う事聞いちゃダメです!私の事は良いから!』
私が身を乗り出して叫ぶと、
「お前も動くんじゃねぇ!!」
頭から床に押さえつけられて激しい痛みに思わず顔が苦痛に歪む。
高杉さんはそれを見て、より一層不機嫌さに眉をしかめながら武器を床に置いた。
『私なんかどうなってもいいです!高杉さんは目の前の奴らを倒す事だけ考えて下さい!』
私の必死の叫びに高杉さんはやれやれといった風にため息をついて、
「泣き虫のくせに何言ってやがる」
気付けば私の目からは大粒の涙が溢れ出ていた。
悲しみなのか、怒りなのか、嬉しさなのか、苦痛のせいなのか、よくわからない涙。
「ピーピー言わずに黙って待ってろ」
高杉さんは優しく私に微笑みかけ、また敵へと鋭い怒りを向ける。
「ハッ!正義の味方ってか?お前らやれ!」
ボスの合図に、次から次へと高杉さんに敵の拳が降り注ぐ。
高杉さんはそれを顔を歪めながら耐えているだけだった。
なんで。
どうして。
何してるの高杉さん。
私なんか助けようとしないで。
『やめて!やめてよ!!』
このままじゃ高杉さんが死んじゃう。
理不尽な暴力に何も出来ない私。
憎しみがフツフツと湧き出てくる。
あぁまただ。
また酷く頭痛がする。
憎い。
コイツら皆憎い。
高杉さんを怒らせる奴
傷つける奴
悲しませる奴
殺そうとする奴
みんな
みんなみんな
死んじゃえ。
そう思った瞬間、私は真っ黒な感情に全て飲み込まれた。
覚えているのはここまで。
意識が闇に飲まれた後、
黒い感情が表に出た、私であって私でないモノは高らかに嗤っていた。
それを私はどこか意識の遠くで聴いていた。