第19章 お家に帰るまでが任務
あいつらの帰りが遅い。
今日は相手もさほど強くはない比較的に簡単な任務だったはずだ。
俺が中々帰って来ない二人に若干イラつきながら自室の窓にもたれ煙管をふかしていると、
「晋助様ァア!!」
部屋に入ってきたのは血相を変えて呼吸を乱した来島だった。
「晋助様!チサが!チサが!!」
「落ち着け」
慌てふためき呂律の回っていない来島を落ち着かせる。
「何があった?」
少ししてやっと冷静さを取り戻した来島に静かに問いかける。
「任務の後、船に帰ろうと走ってたんス。
そしたら後ろから薬をかがされて…
気付いたら天人に捕まっていたんス。
私はこの事を伝えるために解放されたんスけど、チサはまだ…」
なるほど。
俺に恨みのある天人なんか腐る程いる。
その一部にアイツは俺を誘き出すための人質になっているわけか。
俺は再び煙管に火をつけ深く吸い込む。
「それは…ヘマやったアイツの責任だ。俺がどうこうする話じゃねェ」
「…!そんなっ!このままじゃチサは殺されちゃうかもしれないんスよ⁉︎晋助様はそれで言いって言うんスか⁉︎」
俺の発言を咎める来島を軽く睨みつけると、来島はビクッと体を震わせ口を噤んだ。
俺は何かを言いたそうに、でも何も言えないでいる来島の横を通り過ぎ襖へと手をかける。
「今は万斉も任務で出ている。
俺はちょっくら江戸に甘味買いに行ってくるからよォ。
鬼兵隊はお前に任せた」
「….え?」
「アイツがいないんじゃ自分で調達しに行かねェといけねェからな。
ついでに暴れてくるかもしれないから帰りは遅くなると思っとけ」
振り返り来島を見ると、今にも泣きそうな顔をして俺を見ていた。
そんな来島に歩み寄り、いつもアイツにするように優しく頭に手を置いてやる。
「俺ァ売られた喧嘩は買う主義だからな。
今日の飯、アイツに代わって美味いもんでも用意しておけ」
小声で涙に声を震わせながら礼を言う来島を背に俺は部屋を後にする。
アイツと出会って俺は本当に甘くなっちまったもんだな。
さっきの…我ながら俗に言うツンデレってやつかよ。
あの馬鹿ガキには帰ったらキツイお灸を据えてやらないとだな。
俺は急ぎ足で来島の言っていた敵のアジトまで向かった。