第19章 お家に帰るまでが任務
「ここ何処スか⁉︎」
やっと事の深刻さに気付いたまた子ちゃんが辺りをキョロキョロ見渡す。
それと同時に牢屋の外の扉から誰かがやって来た。
「目が覚めたみたいだな」
現れたのは頭は狼みたいなくせにガタイの良い、なんとも可愛げのない天人。
ソイツは鉄格子の外から私に向かって厭らしく嗤う。
「その節は世話になったな、お嬢さん」
その節?…ってどの節?
…もしかして!
『太郎⁉︎お前太郎なのかい⁉︎』
太郎ってのは、昔飼ってたような違うような気がする犬の名前だ。
いや、まさかこんな所で感動の再開を果たすとは!
「ちげーよ!!」
アレ?違うの?
…よくよく考えてみれば太郎は私が飼ってた犬じゃねーや。お隣さん家の犬だわ(´・ω・)
『えー?じゃあ誰ー?』
「第一章に出てきた天人だよ!お前と高杉にボコボコにされたな!」
あー!ハイハイ!
そーいやそんなヤツいたねー。
てか今さら出てくるの?
きっとアンタらのこと読者様も覚えてないと思うよ?
「くっそ!まぁいい!
そっちの金髪の女!来い!」
呼ばれたのはまた子ちゃん。私は身構えるまた子ちゃんの前に庇うように立つ。
「そんなに身構えるな。お前は解放だ」
一瞬ポカンとなる。
が、すぐにまた子ちゃんが反論する。
「そんな、ダメっス!チサが…」
『私は大丈夫だよ』
「でも…」
『ホラ、二人とも船に帰らないと皆心配しちゃうから』
また子ちゃんを落ち着かせるために精一杯の笑顔でなだめると、やっとまたこちゃんは首を縦に振った。
「….わかったッス。きっと、晋助様を連れて助けにくるから!」
そして、また子ちゃん一人牢屋から出され、敵へと着いて行く。
『随分アッサリと帰してくれるんだね?』
また子ちゃんが無事に解放されたのを確認して私は敵へと問いかける。
「俺の狙いは最初から高杉だけだからな。お前はそのための餌だ」
くそ。迂闊だった。
もっと道中に気を配っていれば。
「俺はあっちのネーちゃんと遊びたかったなー」
私が自分の過ちを悔やんでる最中、モブ敵Aが残念そうに溜息をつく。
そんなモブの言葉に、ボス敵は舐め回すように私を見て、
「まぁいいさ、後はこっちのお嬢さんに楽しませてもらえば、な」
そう言って厭らしく嗤った。