第16章 深夜のホラー映画のCMほど怖いものはない
灯りがついた部屋を見渡せば、そこには死屍累々の山。
そして、
襖の前に寄りかかる麗しの高杉さん。
皆が驚きや安心を顔に浮かべて見た。
『高杉さん!!』
私が駆け寄り思わず抱きつくと、高杉さんは呆れたような、でも優しい笑みを浮かべて私の頭を撫でた。
「まったく…何やってんだお前ェらは」
今の顔最高に萌えーーー!!!
思わず鼻血が吹き出しそうになるところをぐっと我慢する。
「この一件、犯人は幽霊なんかじゃねェよ」
そう言って私をそっと離しつかつかと歩き出し、私に投げられすっかり伸びてしまっている武市先輩の方へ向かう。
そして腰に差した刀を鞘から取り出して、
「なァ、犯人はお前ェだろ。天人」
私たちの注意が高杉さんにそれているうちに武市先輩の下から抜け出そうとしていたソレの首元に突きつける。
万斉さんが武市先輩を退かすと、そこにはうつ伏せになった赤い着物を着て羽の生えた女がいた。
「蚊の天人がいる、なんて話を聞いたことがある。
それがお前ェだろ?」
高杉さんが鋭い視線を投げかけると、女はすっかり縮こまってか細い声を出した。
「す、スミマセン〜。その通りです。私達蚊の天人は血を吸わないと生きていけないんですぅ〜」
『本当に天人?』
「はい〜」
『皆は血を吸われただけ?』
「少しずつしか吸ってないのですぐ目覚めるはずですぅ〜」
答えを聞いた瞬間、高杉さん以外の全員が一気に脱力した。
「はぁ。拙者達の苦労はいったい…」
万斉さんまでもが肩を落としている中、相変わらず殺気を放ったままの高杉さん。
「さて、鬼兵隊をこんなにしたんだ。落とし前はどうつけてもらおうか?」
「ヒィッ!命だけは〜」
懇願する天人にニヤリと妖しげな笑みを浮かべて、
刀を鞘に納めた。
「俺は今機嫌が良いんでねェ。気が変わらないうちにとっととここから出て行け」
珍しく高杉さんが寛大だ!!
シビれる憧れるっすわ〜!!
踵を返し天人から背を向ける高杉さんとは逆に、すっかり安心しきった私は天人へと近づく。
『ねぇ、そんなに血が欲しいなら地球の江戸にある新選組ってトコに行ってみたら?ムサい男祭りだよ?』
「あ…そこにはもう行きました〜。けど酷い目に合わされて出てきました〜」
あ、そーいえば漫画の最初の方にそんな話し合ったな。