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隻眼男と白兎

第16章 深夜のホラー映画のCMほど怖いものはない


****


俺は夢を見ていた。


懐かしい夢だ。


あの人がいて、銀時もヅラもいるあの頃の夢。

「嘘じゃない!本当に見たのだ!!」

「嘘だろ、幽霊なんかいるわけねーよ」

「ヅラァ寝ぼけてたんじゃねーの?」

幽霊を見たと言い張るヅラに俺と銀時が嘘だと馬鹿にする。
終いにはヅラの目に涙が浮かんできてやがる。

「コラコラ、小太郎をいじめて、何してるんです?」

割って入ってきたのは、俺らの大事なあの人。

「だって先生、ヅラのやつが幽霊見たとかあり得ないこと言ってんだぜ?」

「おや、二人は幽霊を信じていないのですか?」

俺と銀時は二人して顔を見合わせこくこくと頷く。

「先生は信じてるのか?」

銀時が問うと先生はヅラをなだめながら優しく俺たちに語りかける。

「ええ。私は信じていますよ。
幽霊はこの世に未練がある人だと聞きます。
怒りや悲しみを持った人が幽霊になるのだと。
もし、逢いたい人がいたとして、例えば死んでしまったとして、もう一度その人に逢うことが出来たら素敵でしょう?」

「じゃあ先生が死んだら俺たちの前に現れてくれるのか?」

「いいえ。私は貴方達の前に化けて来たりはきっとしませんよ」

なんでさ?俺が問うと、先生は優しい笑みを浮かべて俺の頭へ手を乗せる。

「私は毎日を悔いなく生きているつもりです。
もし私が死んでしまったとしてもきっと後悔の念は抱かないでしょう。
だから、私は貴方達の事を空からただ見守り続けるだけです。
まぁ、私はそうやすやすと死んだりはしませんけどね」

先生が俺の頭を撫で、それが心地よくて俺はふぅんと適当に相槌を打つ。


心地よい感覚から


意識が夢から遠ざかっていく。


……そうか。

そうだったな、先生。


***



目を覚ますと何やら大広間の方が騒がしい。

体を起こすとまだ多少フラつくが歩けないほどではない。

立ち上がり足元を見ると、先程痛みを感じた場所がまるで蚊に刺されたかのように赤く腫れている。


…これは幽霊の仕業なんかじゃねェ。


俺は急ぎ足で声の聞こえる大広間へと向かった。





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