第16章 深夜のホラー映画のCMほど怖いものはない
正体が分かり私はホッと胸をなで下ろす。
『た、高杉さん!どーしたんです?こんな夜遅くに』
「あァ、万斉のところに用があってな。
…て、お前ェ、近くね?」
高杉さんの着物の袖を掴みピタッと隣にくっ付いている私。
そんな私を鬱陶しそうに見る高杉さん。
『いや、高杉さんが寒いかなと思いましてね?
それより、もう夜遅いのでこの新 チサめが高杉さんを無事部屋までお送りしますね!』
「…何ビビってんだお前ェ」
部屋まであと少しの距離を高杉さんにくっついて歩き出す。
『ねぇ高杉さん、幽霊っていると思いますか?』
「あァ?いるわけねェだろ。
…居たらあの人にも会えるじゃねーかよ」
ボソッと呟いた高杉さんは何処か寂しげで。
その雰囲気に心配した私は何か声を掛けようとして、
「…お前ェ、それでさっきからビビってんのか?」
ギクッ。
見破られた。
『なっ…!べ、別にさっきCM見ちゃって怖くて暗いとこ歩けないとか、一人でいたくないとか、そんなんじゃないんだからねっ!!』
「ガキじゃあるめぇし…あぁ悪りィ、ガキか」
心底ばつが悪そうに謝る高杉さん。
…これ完全に私の事馬鹿にしてるでしょ?
数秒前に感じた私の心配を返して欲しい。
『ガキガキって煩いんだよチクショー!ガキって言った方がガキなんです!!』
「うるせェ。就寝時間に騒ぐんじゃねェ」
「(´・×・)」
…逆に怒られてしまった。
いつの間にか気付くと自分の部屋の前。
「ククッ…一緒に寝てやろうか?怖いんだろう?」
入り口で立ち止まる私に高杉さんがニヤけながら言う。
普段なら、ハイ!よろこんでー!!なところだが、こうも馬鹿にされてはこちらにだって意地ってもんがある。
『うっさいわ!ガキじゃないから一人でも大丈夫です!!
おやすみなさい!!』
そう言ってニヤニヤ笑う高杉さんを背にピシャッと襖を閉めた。
もう!なんなのなんなの?
二人して馬鹿にしちゃって!
チサちゃんだってれっきとした20代なんですからね⁉︎
見た目は大人!頭脳も大人!なんですからねっ!!
プンプンと憤りながらも部屋の中は静かで、今私一人ということを実感した。
…早く寝よ。
そうして私は一人床についた。