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隻眼男と白兎

第15章 病院ではお静かに


『だから、絶対に私は鬼兵隊を抜けたりしません』

真っ直ぐにヅラを見つめると、ヅラもそれに応えるように真っ直ぐに私を見た。

そしてフッと笑うと、やれやれといったように肩を竦めた。

「お主にはお主なりの覚悟があるのだな。
いやしかしお主のような可憐な娘をあのような危険な場所に置いておくのは勿体無い。
どうだ?俺たちの仲間にならないか?
今なら当日入会でうまい棒が10本ついてくるぞ?」

冗談めかして笑いながら言うヅラに私も笑いながら首を振る。

「そうか。残念だ」

そう言ってヅラが立ち上がった。

「お主に一つ言っておきたいことがある」

突然どこか神妙な顔つきで見つめられ、思わず私は生唾を飲んだ。


「ヅラじゃない。桂だ」

そしてニッと笑うヅラに一瞬ポカンとしてから、

『わかりましたよ、桂さん』

釣られて私もニッと笑いかけた。


そのままどこか満足気で桂さんが病室から出ようと扉に手を掛け、

ガラッ

ゴツン


突如開いて入って来た人と桂さんが派手にぶつかった。


床に座り込む黒服と、扉から顔を出しニヤリと嗤う黒服に私は一気に青ざめた。

「ここで会ったが百年目ですぜィ」

何故か土方さんを踏みつけて勝ち誇ったように何処かで聞いたセリフを吐く沖田さん。

私の後ろは窓。敵は二人(一人踏まれてっけど)。
どこにも逃げ道はない。

沖田さんの魔の手が私に近づいて思わず目を瞑ったその時、

ドスン、ドスン

地響きが聞こえ、

「病院では静かにしろっつてんのがわかんねぇのか」

コキコキと指を鳴らしながら鬼、もといナース長が入ってきた。

そこにいた全員が凍り付き、

叫び声があがった。


***


あれから怖い怖ーいナース長から全員正座でお説教を受けた後、私一人が先生のところに呼び出され連れられた。(正しくはひきづられて来た)


「新さん、アナタもう完治してるからダイジョブそうだね。
ていうか治り早くて先生ビックリだよー。

てことで、ご家族には連絡しといたからアナタ今から退院ね。荷物ももうそこに纏めてあるから早く帰ってね。
アナタ脱走ばかりでこっちも大変だったんだからね」

『す、すみません…』

「出来ればもう怪我してこないでね」

爽やかスマイルで辛辣な言葉を投げかけられてチサちゃん泣きそうです。



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