第15章 病院ではお静かに
「どうした総悟?そっちに居たのか?」
小走りで土方さんの足音が病室から遠ざかる。
恐る恐るベッドから顔を出すと、そこにはもう誰もいなかった。
でも勘のいい土方さんの事だ。
またいつ戻ってくるかもしれない。
そろそろと足音を立てないよう慎重に病室から出て、そのまま忍者のように廊下をダッシュ!
一つ下の階に無事到着したところで休憩がてら誰もいなそうな病室に入る。
ガラリと扉を開けると、何かがベッドの辺りで動いた。
首を傾げながらそちらへ近づくと、
「むぅ…うまい棒は一日三本までだぞエリザベスぅ〜」
ムニャムニャと寝言を言いながら幸せそうにベッドに横たわっているヅラだった。
こうしてれば唯のイケメンなのに…
でも、先程された諸行を思い出してまた怒りが湧いてくる。
くそっ、イケメンのくせに!イケメンのくせに!
私の出す殺気に気付いたのか桂さんがハッと目を覚ます。
『ここで会ったが百年目だ…』
「ま、待て!落ち着いて話し合おうじゃないか!」
『これが落ち着いていられるかー!』
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時刻はもうすぐゲーム終了10分前を指していた。
私はというと、(なるべく静かに)ヅラをタコ殴りにして気が済んで呼吸を鎮めているところだ。
「…何故お主のような娘が鬼兵隊に?」
私に殴られパンパンに腫れた顔でヅラが問いかける。
なんか最近この手の質問多いな。
そう思いつつ私はヅラに正直に答えた。
『最初は、ただ高杉さんに拾われただけです。
でも…皆優しくて面白くて、私は鬼兵隊が大好きになりました。
鬼兵隊は私の家です』
つらつらと語り出す私。
それをいつの間にか元の綺麗な顔に戻った(これぞ漫画効果)ヅラが静かに聞いている。
『高杉さんは確かにテロリストです。悪い事もたくさんします。
でも仲間の事をちゃんと気にかけていて、優しくて、不器用で、悲しい人なんです。
ヅラだってそれは解っているんじゃないですか?』
私の問いかけにヅラは答えない。
それでも構わず私は話し続ける。
『私はあの人を、皆を救いたいんです。
皆が笑顔になれるようにしたいんです。
…まぁ、力不足でいつもあの人を怒らせてばっかりですけどね』
私が苦笑を浮かべると、そこでやっと今まで無言で聞いていたヅラが微笑んだ。