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隻眼男と白兎

第15章 病院ではお静かに


今の声を聴いたであろうお巡りさん二人組の声がどこか遠くの方から聴こえた。

「もちろん妨害もアリだ」

しれっと言ってのける桂さんに掴みかかってぶん殴ってやりたいところだが、今は逃げる方が先決だ。

『ヅラ!お前覚えとけよ!!』

叫びながら猛ダッシュで私はそこから逃げ出した。


***


「くそっ!どこ行きやがったあの白髪!」

過ぎ去っていく悪口を空き病室の一室に隠れてやり過ごす。


それにしても、レディーに対して白髪はないんじゃないの⁉︎白髪は‼︎


ふと病室内の時計を見れば時計の針は14時ジャストを指している。

あの時病室から逃げ出したのが13時前だったから多分ゲームが始まってから一時間は経っているはず。

あと一時間この調子で逃げ切ればいいんだから案外楽勝じゃね?
なんて思いつつ病室から出て、

ドンっ

「きゃっ」

誰かとぶつかって私は尻餅をついた。

『っいてて…』

お尻をさすりながら起き上がれば、どうやら看護婦さんとぶつかってしまったようだ。

『ごめんなさいっ!大丈夫ですか?』

まだ地面に倒れ込んでいる看護婦さんに駆け寄って手を差し伸べる。

「あ、ありがとうござますぅ…」


ん?

なんか声が低い?

立ち上がったその人を見ると、

『ヅラ!お前ェは何がしたいんだよォオ!』

看護婦さんに扮した桂さんでした☆

「ヅラではない!ナースヅラ子よ♡!」

♡!じゃねぇよォオオ!!
気持ち悪いんだお前ェはよォ!!!

「いつ何時敵が襲ってくるかわからない。誰が変装してるかわからない。ヅラがナースになってるかもしれない。そこのところしっかりしないと鬼兵隊なんかやっていけないぞ!」

うるせぇえええ!!
女装してるやつがお説教たれてんじゃねぇよォオ!!

完全にぷっつんした私はヅラに飛びついた。

「何をするか貴様!!」

『うるせぇ!!お前ェなんか毛根ごと引っこ抜いて本物のヅラにしてやるぅう!!』

髪に手を伸ばす、が届かない(涙)

ヅラともみ合いをしていると、

「テメェ!何やってんだコラ!」

土方さんに見つかった。

青ざめている私の傍ら、勝ち誇ったように嗤うヅラ。

その表情にまたぷっつんきた私は、桂さんの襟元を掴み、

土方さんに向かって思いっきり投げ飛ばした。


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