• テキストサイズ

隻眼男と白兎

第15章 病院ではお静かに


***

俺は今見回りついでに総悟と、ゴリラ王女騒動で入院した近藤さんの見舞いに来ている。

「近藤さん、入るぜ」

病室の扉をガラリと開けると、


「ううっ、、」

『どーしたゴリさん⁉︎』

「この漫画みたいな恋したいなーって…。俺の恋愛はなんで成就しないんだーー!!」

『だからゴリさんはぐいぐい行きすぎなんだって。アレだよ、押してダメなら引いてみろ作戦?』

包帯を身体中に巻き付けた男女がそれぞれのベッドで漫画を広げながら女子トークに花を咲かせていた。

いい大人が……

「……何やってんだよ」

俺が呆れ声で呟くと、包帯グルグル巻きのゴリラみてぇな近藤さんがハッと顔をあげた。

「トシ!総悟!」

感動的な対面に目を輝かせている近藤さんを尻目に、俺と総悟は呆れ果て白い目を向けていた。


『ゴリさんのお友達?いいなぁ〜。私の仲間は誰一人として見舞いに来ない薄情者達さ〜』

漫画から顔を上げたソイツの真っ赤な瞳と目が合う。

小柄な体型に、白い髪。

「あ。アンタあの時の」

どうやら総悟もソイツを覚えていたらしい。

ソイツは俺たちを見ると、みるみるうちに顔を青くさせ冷や汗をかきだした。

『ナ、ナニイッテンデスカ?ワタシトアナタ、アッタコトナンカアリマセーン』

目を逸らしカタコトで喋るソイツは誰がどう見ても怪しい。

「トシ?チサっちゃんと知り合いか?」

「前に言った、変な免許証を持ったガキだ。
ここで会ったが100年目、ちょっと来いガキンチョ」

俺がソイツを捕まえようと手を伸ばすと、ソイツは俺の手をすり抜けて脱兎のごとく病室から逃げ出した。


あまりの速さにポカンと口が開いたままの俺たち。

「あのヤロ」

一歩遅れて病室から飛び出す俺と総悟。

「おいトシ!チサっちゃんは絶対安静の病人だぞ!」

後ろで近藤さんが叫ぶ声が聴こえたが無視を決め込む。

病人があんな速く動けるワケがねェ。前にあった時も思ったがアイツからは怪しい匂いがプンプンする。
捕まえて身元を明らかにするまで気が済まねェ。


アイツが駆けて行った方向へと二人して追いかけた。
/ 250ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp