第14章 初めてのお仕事
やがて田口さんを無事倒したらしい高杉さんがつかつかと私の方へ歩み寄って来た。
『お疲れ様でした!』
ビシッと敬礼しようと腕を上げ…
アレ?上がらないぞコレ?
そこで生まれたとある疑惑に私は冷や汗をかく。
「あァ。…それより」
高杉さんが歩み寄ってきて私を見下ろす。
?と首を傾げて見上げると、
ガシッ
『いっっだぁァアア!!』
高杉さんに握られた腕が猛烈な痛みを帯びて悲鳴をあげる。
さっきもしかしてとは思ったけどコレ、
やっぱり折れてんじゃねェかァアア!!
「荼吉尼族なんか素手でぶっ叩くからだ馬鹿。お前ェは帰ったら病院な」
病院…?
そのワードを聴いた瞬間に私の顔は青ざめる。
思い出される不快なドリルの音、痛いのに止めてくれない無表情な機械のように人に痛みを植え付ける医者。
病院イィヤァアア!!(それ全部歯医者だ)
涙目になり震えている私に屁怒絽弟さんが声をかける。
「すみません。たくさん怪我を負わせてしまって」
『いえ!自業自得なんで!私こそ肩の傷ごめんなさいっ!…痛いですよね?』
肩の傷にそっと触れ問いかければ、屁怒絽弟さんは大丈夫と笑い(怖い)問い掛け返してきた。
「貴女のように心優しい方が何故鬼兵隊にいるのです?」
『護りたい…いや、違うな…。私は多分あの人を救いたいから此処にいるんです。
まぁ、怒らせてばっかりですけどね』
えへへと苦笑を浮かべれば、屁怒絽弟さんは微笑んで(怖い)、
「きっと救われていますよ。貴女の強さに、優しさに」
その優しい言葉に思わず顔が赤くなるのを感じた。
『ありがとうございます』
「おいガキ!引き上げるぞ」
いつの間にかみんなをまとめ帰ろうとしている姿を見つけ慌てて私は立ち上がる。
『弟さん、今度江戸に行きます!ので、また遊びましょー』
みんなの方へ私は駆け出す。
帰路へ着く道すがら、
「ガキ」
不意に高杉さんに呼ばれ、私が見上げると、
「その…今回は助かった。良くやったじゃねーか」
照れ臭そうに前を向きながら横にいる私の頭を優しく撫でた。
屁怒絽弟さんの言葉が蘇る。
『これからも私は高杉さんの事御守りしますからね』
ニッコリと笑いかけると、
「調子乗ってんじゃねーぞ」
フンと鼻で笑って悪態を吐きながらも、高杉さんも優しそうに笑っていた。