第14章 初めてのお仕事
ガードの体勢に入る無防備な背後に素早く回り込み、思いっっきり突きを食らわす。
「ぅぐっ」
屁怒絽弟の体が前にのめり、その顔は痛みに歪んでいた。
効いてる!!
…けど、
ビリビリと拳に痺れが走る。その痛みに思わず涙腺が緩む。
硬ってェェエエエ!痛ってェエエエエ!!(涙
いくら馬鹿力って言ったって身体はか弱い(?)女の子。
でもこれしか方法がないならやるしかない。
屁怒絽弟さんの隙を付いて一気に畳み掛ける。
何度も突きや蹴りを食らわせれば、その巨体は徐々に後ろへ後退していった。
もう少し!
だが流石に身体が痛みに悲鳴を上げてきている。
私は近くにあった鉄パイプを素早く手に取り、反撃に出た屁怒絽弟さんの攻撃をギリギリで避け、今度は鉄パイプで再びタコ殴り作戦を再開する。
ガンッ
どれぐらいの間そうしていたか、やっと作戦通り屁怒絽弟さんの巨体が鉄パイプの山にぶつかった。
怯んだ一瞬を付きその厚い肩に刀を思い切り突き刺す。
しかしその厚く硬い皮膚には貫通なんて程遠い。
勢いをつけ高く跳躍し、肩に突き刺さる刀の柄へとかかと落としを食らわせれば刀はやっと肩を貫通し、更に屁怒絽弟さんの体を鉄パイプの山の中へとめり込ませた。
狙い通り高く積まれた鉄パイプはけたたましい音をたてて屁怒絽弟さんに向かって崩れる。
屁怒絽弟さんはその鉄パイプの山の下敷きとなった。
荒くなった呼吸が鎮まるのを待ち、
数分後呼吸が落ち着いた所で、一本ずつのしかかった鉄パイプをどかしていく。
最後の一本をどかしたところで屁怒絽弟さんが目を開けてゆっくりと私に目線を飛ばした。
「何故殺さない?私は貴女の敵でしょう?」
『これが私の精一杯ですよ』
自分の力を出し切ったのは本当。
でもそれ以前に、攻撃するときの弟さんすごく哀しそうな諦めたような顔をしていたもん。
そんな人相手に余計な傷は負わせられない。
『私も無駄な殺生はしたくないんですよ』
これは記憶に残る屁怒絽さんのよく使う言葉。
いたずらっぽく笑って見せれば、屁怒絽弟さんもその凶悪そうなお口を上に吊り上げて笑った。
多分笑ってるんだろうな。
恐いけども…。