第14章 初めてのお仕事
躊躇いもなくその大剣が私に向かって振り下ろされる。
動き自体はさほど速くない。
素早く避けるが、それは地面を抉り地割れを起こした。
咄嗟のことに体制を崩し尻餅をついた私へと、飛び散った地面の欠片が私に降り注ぐ。
「手の空いてるやつはガキの援護に回れ!!」
後ろで未だ刀を交わし合っている高杉さんが声を荒げると、それに気付いた何人かの隊士さん達がこちらへ駆け寄ってくるが、
いとも簡単に返り討ちにあっている。
奢りでは無いけど、多分今来た隊士さんよりも私の方が強いもん。。
向かってきた隊士をあらかた片付け、再び攻撃の手が私の方へ向けられる。
何度も薙ぎ払われる大剣を先程よりも慎重に避けながら、ふと私の中にある疑問が生まれる。
この人、どっかで見た事があるような?
見た目超怖いのに花屋やってて、銀さんの近くに住んでる荼吉尼族と言えば……
『…屁怒絽さん?』
相手の手がピタリと止まる。
やはり私の勘は当たっていたようだ。
「屁怒絽は私の兄です。
…ですが、事情により今はこちらも雇われている身、兄の知り合いを手にかけるのは何とも心苦しいが、勘弁願おう」
止まっていた手が再び動き出し、横振りに薙ぎ払われた大剣を私は後ろに飛んで躱す。
このままじゃ攻撃するどころかこっちの体力が保たない。
どうしたものかと考えていると、
「チサ!!大丈夫っスかぁあ!!」
声のした方をチラリと見ると、また子ちゃんが上の足場から銃を撃ちながら声を張り上げている。
「私もまだ手が離せないっス!もう少し耐えるんスよォオ!!」
何かが私の方へと投げられる。
それは私がまた子ちゃんに預けていた愛用の弓矢だった。
それを上手く空中でキャッチし、屁怒絽弟さんと距離をあける。
狙いを定め素早く何本も射つが、それは硬い体の表面に軽く刺さるぐらいで全くダメージを与えられない。
刀もダメ、矢もダメ、攻撃が当たれば一瞬でK.Oか。
残る手段は…。
ふぅ、と息をつき、私は持っていた弓矢を地面に置き、先程折れた刀を腰に下がる鞘へと戻した。
それを見ていた屁怒絽弟さんが訝しげに首を傾げる。
「おや、もう降参ですか?」
『いいえ』
私はニコッと笑顔を向けると共に、思い切り地面を蹴って私の出せる最高スピードで屁怒絽弟さんへと突進する。