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隻眼男と白兎

第3章 夢じゃないし夢じゃなかった!


今日は晋助の私用とやらで白昼堂々
鬼兵隊の艦体は今江戸の港にある。


「万斉ー、晋助様はまだスか?
もーすぐ新選組が見回りにくる時間っスよー」

そう甲板に身を乗り出して言うのは来島また子。

「そう言うな。
晋助もじきに戻るでござろう」

拙者、河上万斉はただ三味線を鳴らす。


とは言え拙者自身多少の焦りはある。

いつもであれば晋助は約束した時間には必ず戻るのだが、

今日はやけに遅い。

また子の言うように新選組に会おうものなら人騒動はやむを得ないだろう。


晋助不在の今無駄な争いは控えたい。




不意に港に目をやると見慣れた紫の男と

担がれた白い女がいた。


「晋助様ー!お帰りなさいっスー!…
て誰スかソイツー⁉︎」


駆け寄ったまた子もこの事態に気付いたようで素っ頓狂な叫びをあげている。

拙者も三味線を置いて晋助のもとへ向かう。


「知らねェ。拾った」


晋助が言うとまた子は訝しげな目を女に向ける。


「まぁ、また子、晋助が女子を連れ帰るのはこれが初めてではないでござろう、」

確かに晋助は今までにも何回か遊女を連れ込んだ事はある。
しかし、担がれたその女は顔は良いものの、
遊女のような煌びやかさ、艶やかさというものに欠けていた。

それに何やら見慣れない格好をしている。




「船を出すぞ、ソイツの手当をしてやれ」


グイと女を押し付けると勝手気儘に船内へ入っていこうとする晋助。


目を凝らすと晋助の刀や着物には血がこびりついていた。


ぁあ、なるほど。



「晋助、お主怪我は?」



「あるわけねェだろ」


流石は我ら鬼兵隊総督。

晋助は不機嫌そうに一言返すと船内に入ってしまった。


「と、いうわけだまた子。すまぬがお主の部屋にこの女子を連れて行ってもらえるか?」

今だ晋助と女を交互見ていたまた子は不機嫌そうに言を洩らすが、渋々と女を引きずって船内へ戻って行った。



はぁ、やれやれ。

また我儘総督に振り回されるのか。



こうして艦隊は江戸を後にした。



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