第2章 ユキとファル
「待て」
立ち上がって逃走劇を繰り広げようとした私を、低い声が引き止めた。
『ぉわぁっ‼』
いきなり押し倒され、男と目が合う。
「お前は誰だ。何のために、どうやって結界の中に入った。術者はどこにいる」
人がいた事といきなり押し倒された事に驚く間も無く、意味の分からない疑問をぶつけてきた。
『ちょっ、ストップ‼そんなに一気に訊かれても困るでしょ‼』
男の頬を思いっきり引っ張ってやった。
「‥‥‥‥」
男は少し驚いた様な顔をして、落ち着いたのか静かに私が応えるのを待った。
『‥‥‥ユキ。私の名前はユキ』
「‥‥‥‥」
『‥‥あなたの名前は?』
「‥‥ファルコン‥‥」
『ファルコン‥‥』
「ナイトソルトコナンベルトスレイヤーフロト‥『長っっ‼』」
「‥‥‥‥お前が訊ねた」
いや、確かにそうだけども。
こんなに長いなんて思わないだろう普通。
『‥‥長いからファルって呼ぶ』
「‥‥まだ俺の質問に全て答えてない」
『悪いけど、結界とか術者とか私知らないよ?』
「‥‥‥‥‥‥」
『‥‥‥‥‥‥』
しばしの沈黙。