• テキストサイズ

月島と恋愛に後ろ向きな三年生が付き合うまでのお話。

第3章 翌日


 朝練を手伝いながら分かったのは、月島くん相手だとぎこちなくなるけれど、それ以外は何もかもが通常運転で行動できるって事だ。最初は潔子ちゃんに迷惑かけずに済みそうで良かったと思った。現に授業は真面目に受けられたし、考え事で精一杯、なんてこともなかった。
 でも、漫画や友達の時はもっと彼の事で手一杯みたいだったのに、私は違うんだと感じて胸の奥がすうっと冷えていく気がした。やっぱり恋愛事なんて私には向いてないと諦めの呪文を唱えて嫌な思考回路を遮断した。

 上靴を下足箱に仕舞って、登下校用のスニーカーを履いて、肩に鞄を掛け直す。少し重い玄関扉を押して開けようとしていると急に軽くなった。私の手じゃない、扉の取っ手を掴んでいて、この手が開けてくれたらしい。
「・・・・もう、帰るんですか?」
 手と声の主は月島くんだった。少し大きめのスクールバッグを背負っていた。
「予選始まるちょっと前までは部活出られないんだ。ごめんね」
「用事、とかですか?」
「塾だよー。予選日と、予選日の2,3日前は部活出たいってごねたらね、それまでの日ぜーんぶ塾にされちゃって」
 母とのやり取りが頭の中に蘇る。やや鬱陶しげに見られたけれど、無事に予選日前後は部活に費やせるので私としては問題なしだ。
「月島くんはこれから部活でしょう? 頑張ってね」
「一人で帰って大丈夫なんですか?」
「大丈夫、塾も学校と同じでバス通いなの」
 またね、と手を振って月島くんと別れた。塾帰りに、月島くんと距離を置くような日程に気付いた。ちょっとの安心感と、微塵の期待が入り混じって溶ける。明日の朝も彼はバス停の隅で待っているのだろうか。
/ 9ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp