月島と恋愛に後ろ向きな三年生が付き合うまでのお話。
第3章 翌日
月島くんがこちらを見て、白いヘッドホンを外して近寄って来る。
「おはようございます」
「おは、よう・・・・」
声が上擦る。気まずい。そんな私に対して月島くんはいつも通りの、涼しい顔。
「ど、どうしたの? 誰か待ってる、とか?」
「藤波さんを待ってました。避けられでもしたら厄介ですし」
「厄介って・・・・」
随分な事を言うくせに悪戯気に笑う月島くんに、ドキドキしてしまう私は早く月島くんを好きな自分から抜け出すべきだと痛感した。一晩で消せる筈ないって解っていた。一方的に好きでいる分には誰も傷付かないのに、どうして月島くんは私なんか好きだと言ったんだろう、八つ当たりのように思う。
「藤波さん、朝練に遅刻しますよ」
「あ、うん・・・・。早く行こっか」
ぎこちない私に声を掛けて月島くんがさりげなく隣を歩く。歩幅も歩く速度も私に合わせても尚、崩れないポーカーフェイス。憎たらしい。
接触するだけでいちいち反応してしまう事、彼は解ってやっているのだろうか? 一緒に登校する、それだけなのに、この彼の掌で踊っているような感覚はなんなのだろう? 早く切り離してしまいたい。蜥蜴の尻尾みたいに。彼の事を嫌いになってしまうその前に。