月島と恋愛に後ろ向きな三年生が付き合うまでのお話。
第4章 約束
「・・・・私ね・・・・・・バレー部のマネージャー、今日で辞める事になったの」
告白したら失敗して、けれど脈はまだあると解っているから諦めずにいる。まだ一昨日の告白から3日目だ。それなのによくもまあ、こんな次から次へと事が起きるものだ。諦め顔で謝る彼女を見下ろして溜め息を吐く。
「ごめんなさい・・・・。昨日あんなこと言ったのに」
「僕が邪魔だから辞めるんですか?」
「違うよ」
静かな声だった。でも刺すような声。彼女の手の中には黒いジャージ。烏野排球部と背に印字されたそれ。
「どうして辞めるんですか?」
「そもそも、新しいマネージャーが増えたら辞めるって約束だったの。仁花ちゃんがマネージャーとしてバレー部に入った時点で、私はバレー部を辞めなきゃいけなかった・・・・。なのに私は約束を忘れたふりしてバレー部に居座り続けた。・・・・バレー部でマネージャーしてるのが楽しかったし好きだったから辞めたくなくて、約束を知ってる潔子ちゃんも澤村くん達も約束の事を言わなかったから、甘えてた・・・・」
唇を噛み、ジャージを抱きしめる彼女の顔を窺い知ることは出来ない。一昨日と同じ、つむじと白いうなじが見えるだけ。退部する事が大分ショックらしい。が僕は彼女とは真逆に、安心していた。別段、悲観するような事態ではないと話す理由の内容で分かったからだ。
「・・・・辞める理由はその約束だけですか?」
「そう、だけど、どうして?」
「辞める必要ないんじゃないかと思って」