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月島と恋愛に後ろ向きな三年生が付き合うまでのお話。

第2章 理由


「・・・・怖いんだ。恋愛事なんてわかんないし、最後は嫌いになっちゃう。それが、嫌なの」
「・・・・どういう意味?」
「そのまんまだよ。昔、物凄く仲が良かった筈の夫婦が教えてくれたの」
「鵜呑みにしてるだけじゃないの?」
 “嫌いになっちゃう”。真意を量りかねて聞き返せば言葉が足されて返って来た。決して疑問が解消される返事ではない。“教えてくれた”、その言葉に違和感を覚えながら指摘してみるも、悲しそうに彼女は首を横に振った。
「ちゃんと、見てたから。鵜呑みって事はないと思うよ」
「・・・・仲良かった筈の夫婦って藤波さんの両親ですか?」
「うん、今は離婚して元夫婦、かな」
 原因判明。実際、不仲な夫婦や離婚だなんて今どき珍しくはない。珍しくないが、その事実に悲しみ痛む子供だっている。藤波さんのように。最早トラウマ程になっていそうな大きな傷が、僕に立ちはだかる大きな壁そのものだ。
 好きだと、恋しいと言えば言うほど、彼女の傷を不用意に撫でているようなもので、その度に彼女は痛いと、触らないでと泣くのだろう、と容易に想像がつく。
「藤波さんが、僕に告白したのは諦める為ですか?」
「・・・・・・・・振られたら多少諦めは付くでしょ?」
 泣きそうな声でそういう彼女に、僕は面倒な人を好きになってしまったと、思った。それでも彼女を諦める選択肢が出てこない僕は、なかなか恋と言うやつに浮かされているらしい。
 もう一度、諦めないと宣言して念を押しておくべきか、空になったカフェオレ缶をゴミ箱に落としながら思った。
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