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月島と恋愛に後ろ向きな三年生が付き合うまでのお話。

第1章 告白失敗


 一歩、一歩、靴音を響かせて詰め寄る。怯える割に逃げる気配はなかった。代わりに彼女の目は忙しなく動いている。僕の顔を見て、逸らして、おろおろと視線を宙に漂わせて、でも目は合わない。
「藤波さんが、僕を好きだと言ったからには諦めるつもりないですから」
 彼女の体が、僅かに漏れる声が、震えている。何をそんなにも怯えるのか僕には分からなかった。細い手首を引っ張れば、藤波さんは簡単に僕の胸に倒れ込んだ。これ以上、怯えられても困る。僕はなるべく落ち着いた声で言う。
「付き合いたくない理由ぐらい、喋ってくれたっていいんじゃないの?」
 彼女は、ぱくぱくと口を開閉させて今にも泣きだしそうな顔で。言いたくないなら別に良いと言葉にする前に、蚊の鳴くような声で、嫌わないで、と聞こえた。
「拒否しておきながら『嫌わないで』ってそれはまた我が儘なお願いだね」
「・・・・ごめ、・・・・なさい」
 ああ、とうとう泣き出した。これは僕が苛めた事になるのだろうか。手持ち無沙汰ついでに彼女の頭を撫でてやるとしゃくり上げながらこちらを見た。この期に及んでも上目遣いになっているのが可愛いなど思ってしまう自分が嫌だ。
 涙で溢れる目を懸命に拭って、しゃくり交じりの呼吸を整えようとして肩で息をするのは、話してくれる意志があるからか、単に苦しいのか。さっきまで頭を撫でていた手で彼女の背中をさする。若干赤い目で、再度僕の目を見た彼女はまだ震える声で言う。
「あの・・・・理由、聞いてくれる?」
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