第49章 愛しています
第3者side
黒子が完全に部室の外へと出て後ろを振り返ると、最初から名前の存在なんてなかったかのように誰も居なかった
試しに部室の中を覗いてみたが、やはり何も変わらない。いつも通りの部室だった
黒子は悲しそうに俯いて、ただ床を見つめていた
黒子
「…」
その時彼のポケットに入れておいた携帯へとメールが届き、内容を読んだ彼は嬉しそうに笑みを浮かべた
そんな彼を探しに来た火神は部室の中を覗いているが、黒子は既に外にいる。影の薄さ故に気づかないのだろう
黒子は彼を見越して、火神の後ろへと回り込み話しかけた
黒子
「呼びましたか?」
火神
「おわあっっ!!おまっ…だからぁ!!」
黒子
「すみません。ちょっと桃井さんから写真を取りに行って遅くなりました」
火神
「あー、お前の誕生日に企画したっつー…じゃねーや練習!!みんなそろってんぞ。名前は!?」
黒子
「名字さんなら…少し遅れてくるそうです」
火神
「そうなのか?ッチ、何してんだあいつ」
黒子
「気長に待ってあげましょう」
火神
「仕方ねーな…行くぞ!!」
黒子
「あ、はい」
その頃、誰もいなくなった部室へと風が入り込み、ちゃんと閉められていなかった黒子のロッカーの扉が開いてしまった
そんな彼のロッカーの扉の内側には、先ほどWC優勝のメダルと写真が2枚が飾られていた
1枚は誠凛バスケ部全員でWC優勝の際に撮ったもの、もう1枚はキセキの世代全員で黒子の誕生日の時に撮った写真だった
両方の写真で名前は満円の笑みを浮かべて嬉しそうに写っていた
日向
「おっせーぞ黒子!!よおし、じゃあ練習始めんぞ!!誠凛ーファイ!!」
「「オオ!!」」
体育館に響いた声に混じって、黒子の耳には横から聞き慣れた彼女の声が聞こえた気がした
横を見てもバスケ部員の彼らしかおらず、やはり寂しそうにしていた
だが彼女からもらったメールを思い出して目を伏せてからまた嬉しそうに笑い、練習を始めた