第8章 誓いと記憶
名前
『これ、良かったら使ってください』
笠松
「いや、いい」
名前
『いいから濡らして使って下さい
目、腫れてますよ』
笠松
「い、いや」
名前
『いいから!』
笠松
「…サンキュ」
しぶしぶ受け取った笠松さんにニコリと微笑んで、彼の顔を観察する
りんごみたいな顔の赤さに加えて目元はさらに赤くなっており、あー女苦手がすごい意識されてんだなー。としみじみ思った
女扱いされてる!と少し喜びながら
笠松
「こ、こここここれ」
名前
『はい』
笠松
「か、返すときの、連絡先」
名前
『あ、アドレスですね』
先ほどバッグに仕舞った携帯を取り出して、自分のプロフィール画面を開く
赤外線で送信しようとしてパッとアドレスを確認すると、前とは違うアドレスと電話番号になっておりあたしは首をかしげた
恐らくあたしがいなかった3ヶ月…あれ、3ヶ月しか経ってないのか
とりあえずその間に携帯を機種変したんだろう。多分
名前
『あ、どうぞ』
笠松
「サ、サンキュ」
名前
『もしあれだったら涼太…黄瀬くん経由でも構わないんで』
笠松
「…黄瀬?」
名前
『あ…はい』
涼太のファンか。という視線をあたしに向ける笠松さん
別にその視線に不快は感じないが、よく感じることはできなかった