第46章 彼女の努力
彼女が全力で走って、着いた先にはベンチに赤い髪をした彼が座っていた
その姿を見た名前は1度息を飲んでから「征十郎…?」と彼の名前を呼んだ
すると彼、赤司は声のした方をみてから「待っていたよ」と言って笑った
名前
『…思い、出しましたか?』
赤司
「…名前名字、元帝光中の監督…だろう?」
名前
『っ!』
それを聞いた名前はその場から駆け出して、彼に抱きついた
彼はそんな彼女のことをしっかりと受け止めて、名前の事を愛おしそうに抱きしめた
赤司
「忘れてしまって悪かったね」
名前
『征十郎のアーホ』
赤司
「…その通りだね」
名前
『でも嬉しいよ、思い出してくれたんでしょう?』
赤司
「ああ」
それだけで充分。とニコリと笑を返すと彼は目を細くさせて笑った。そのことにより名前の中での何かが消え去った
涙を拭いながら目を開けると赤司が驚きで目を見開いており、彼の瞳を見ると名前の髪の色、眼の色に変化が現れていた
名前
『あ、戻って…る』
赤司
「何か心境の変化でもあったのかい?」
名前
『ん、まあ』
そう言って彼女は赤司から離れて髪を撫でてからフッと笑い、赤司は名前を見て「悪かった、髪を切ってしまって」と少し申し訳なさそうに言った
だが彼女はごく普通に「許す」と呟いて楽しそうに笑った
赤司
「それよりも名字、走ってきたのかい?」
名前
『だって、その方が速いし』
赤司
「手が冷たいよ」
名前
『運動したあとなんだけどなぁ…』
自分の手に息を吹きかける彼女に赤司は「はい」と言ってなぜかコーンスープを渡してベンチへと向かった
名前
『征十郎』
赤司
「なんだい?」
名前
『いつ、思い出したの?』
彼女の質問に赤司はどこから出したのか飲み物を1口飲んでから、「そうだね…と説明を始めた」
赤司
「試合終了直後だよ」
名前
『え』
赤司
「もっと詳しく言えば…誠凛に負けて感傷を味わっていた時かな」
そう言った彼は空を見ながら、話を始めた