第28章 緑と青と2,3回戦
緑間
「…悪かった」
緑間に抱きしめられている彼女は先程から流している涙を、さらに落とし始めた。だが彼女はそれよりもココアが落ちないかを心配していた
緑間
「無理をするな」
名前
『無理なんか、してない』
緑間
「強がるなバカめ」
名前
『強がってなんかないし』
緑間
「前にも言っただろう、お前は女なんだから頼って良いのだよ」
名前
『帝光の…時の…』
緑間の言葉を聞いた名前は目を見開いてココアを地面へ落とした。残り少なかったが少し零れてしまい、風に揺られてどこかへ転がっていった
ココアが無くなったため開いた両手は緑間の背中へと回し、ジャージをぎゅっと握っていた
名前
『みんなが覚えてないって、分かってた。でも、やっぱり目の当たりにすると…』
緑間
「…辛かったか」
名前
『きっと2人は覚えてるって、甘えてたんだと思う…でも、テツヤと涼太と緑間と思い出して…さつきと和成が覚えてて良かったよ。きっとそれがなかったらダメだった』
ありがとうと笑う名前に緑間はフン…と言った。そんな彼に彼女は『テツヤと涼太も支えるって言ってくれたなぁ』と思い出しふんわりと笑みを浮かべ、そして数秒間目を閉じて、緑間に「もう大丈夫」と声を掛けた
緑間
「もう平気か?」
名前
『うん。ありがとう』
その言葉を聞いた緑間は彼女に回していた腕を解いた。そして彼は数秒間黙り込み、目を見ながら言った
緑間
「俺が勝って、赤司にお前を思い出させてやるのだよ」
名前
『…え』
緑間
「準決勝で恐らく俺は洛山と、赤司と当たるだろう。そこであいつに勝ち…お前のことを思い出させてやるのだよ」
名前
『…うん。期待してる』
それじゃありがとうと言って彼女は荷物を持ち直して歩き始めた。緑間がそれに返事をして名残惜しそうに両手を見つめていると、少し離れた場所で名前が声をかけてきた
名前
『やっぱり緑間はお母さんだね!また決勝で会おう!』
緑間
「…勿論なのだよ」
彼女の背中を見送った緑間はおしるこを啜ってから、「俺は母親よりも…上になりたかったがな」とポツリ呟いた