第26章 『ゾーン』
そして試合は青峰対火神と、ゾーンに入った者同士の戦いとなった。だが、彼らはどちらかがシュートを撃とうとするとかならずブロックされてしまい、点が入らなかった
時間は残り1分11秒という少なさとなったものの、点差は埋まらず相変わらず5点差だった
赤司
「(2人ともゾーンによる集中力と反射速度が最高速度を越えている…)」
氷室
「ラチがあかないな…」
高尾
「それでも両チームエース一辺倒なのはいったい…?他の4人でボール回せば点はとれるんじゃないか?」
緑間
「…ムダなのだよ。おそらく結果は変わらない。ゾーンはただ100%の力を出発揮するだけのものではない
ゾーンに入ると雑念はもちろん周囲の声・音、景色まで不必要な情報はカットされ、その分目の前の相手だけでなく他の選手の位置や動きなど必要能力が向上する」
高尾
「…は?」
緑間
「要は「視野が広がる」のだよ。加えて片や高校最速の男と片や高校最高の男だ。守備範囲は常人のそれをはるかに超える」
笠松
「今の2人にの前で生半可な攻めは逆に危険だ。だからこそ勝負の行方は、2人のエースに託された
黄瀬
「(そんな場面で…いや…そんな場面だからこそっスか)」
桃井
「(昔からそうだった。路上でバスケを始めた時から…相手が強ければ強いほど目を輝かせて、夢中でプレイしてた)
…青峰くん…楽しそう…」
彼らの視線の先で青峰は目を輝かせ、笑みを浮かべながらプレイしていた。その様子を見た黒子をはじめとする選手はみんな目を見開いているようだった
2人のエースが散らす火花は会場すべてを魅了し、永遠に続くかに見え、また誰もがそうであってほしいとさえ思った。だが決着は、突然訪れた
火神がついに青峰のことを抜き、シュートを決めたのだ
「ぶち抜いたぁー!!」
「なにぃー!?あの青峰が…!?」
「誠凛再び3点差ー!!」
小金井
「うおおおお火神ぃ!!」
今吉
「(バカな…どうなっとるんや、火神の方が速いやと…!?)」
残り41秒3点差まで追い付いた誠凛は、かなり喜んでいた。その後ろで今吉は目を見開き火神の背中をみつめていた