第7章 本田菊さんの彼女。
心夏「…うわー…やっぱ広いなぁ…。」
辺りをきょろきょろしながら前へと進む。
菊「ふふ。小動物のようですね。」
心夏「いや、だって流石にこんな立派な家ならだれでもきょろきょろいろんなとこ見ちゃうよー」
菊「そうなんですかね…?あ。ここが居間ですよ。お茶を淹れてくるので少しここで待っていてください。」
心夏「あ、うん。分かった。」
座布団の上に腰かけ、また辺りを見回した。
心夏(…なんでこんな機械がいっぱいあるんだろ。)
ハイテクそうな機器が沢山並んでいた。
コンセントなんて踏んじゃったら一大事だな…。
心夏「気を付けなくちゃ!」
菊「何を気を付けるんです…?」
お茶を淹れる一式と茶菓子をもった本田君がふすまを開けて入ってきた。
心夏「あ、いやなんでもない、気にしないでー」
菊「わ、わかりました…。」
とぽとぽ、とお茶を注ぐ音がする。
菊「はい、どうぞ」
私の前に差し出された湯呑には一本の茶柱が立っている。
心夏「あっ。茶柱だ…!ねぇねぇ、見て、茶柱!」
菊「まぁ。それはよかったですね!きっといいことがありますよ。」
心夏「いいこと…かぁ。何かなー?」
菊(故意に立てただなんて言うまい…。)「心夏さんが思う良いことって何ですか?」
心夏「そうだなー…、好きなだけ寝られるとか?……あ。」
我ながら女子として可愛らしくないことを言った気がする…。
菊「んー…。そうですか…。私にできることであれば、と思ったのですが…。」
心夏「…え、あ、じゃあじゃあ!また肉じゃがが食べたい!です!」
菊「あぁ、はい!そのようなことでしたら喜んで。」
心夏「やった!」
昔もこんな感じの話をしてたんだろうな、と思うと自然と少し口角が上がる。嬉しいのか、切ないのか…。