第7章 本田菊さんの彼女。
バスを降りて目に入ったのは
大きな桜の木。
今はもう桜は枯れてしまっているけど、きれいな緑の葉っぱがたくさん付いている。
その木を見ていると心の底から何かがこぼれ出てきそう。
菊「…思い出しましたか?」
心夏「ここ…もしかして、 あの本田君の言ってた、桜の木…?」
菊「はい、そうです」
私が本田君と居て初めて笑った場所。
私が本田君と居て初めて"ありがとう"と伝えられた場所。
私が本田君と居て初めて心から"幸せ"を知った場所。
心夏「あっ…。ぁ…。」
涙をこらえてなにも言葉にできない。
もう、感動でも不安でもない。
意味も分からず私の中では"ありがとう"でいっぱいになった。
そしてそれを優しく包み込んでくれた。本田君が。
抱きしめられた瞬間、全身の力が抜けてへたり込んでしまった。
そして、また涙が止まらない。
心夏「…あぁ、もう、ほんと… ごめんなさい、ありがと… 本当にありがとう。好きだよ。大好き…。 これからもずっと、ずっと、ずっと。」
もう訳の分からない言葉の繰り返し。
菊「はい、私もです。 ずっと好きです。大好きです。
ですが、これから私は謝らなくてはいけない話があります…。聞いてくれますか?」
心夏「…え?」