第6章 私の記憶
アーサー君は、私たちの視線に気づいて落とした鞄と鞄の中身を拾い始めた。
心夏「…さっきまでの…聞いてた、よね…?」
こちらに目を向けず、俯きながら少しだけ首を縦に振った。
アーサー「…でも、盗み聞きじゃねぇぞ。ただ、荷物取りに来たらお前らがいて、入っちゃまずいと思ってここにいただけだ…。……じゃあな」
拾い終わるとこちらに軽く顔を見せて走っていこうとしていた。
心夏「アーサー君待っ___」
菊「待ってください。」
本田君の冷静で冷たい声はアーサー君だけじゃなく、周りの空気までも止めたように感じた。
アーサー「…んだよ」
私は見ていることしかできない。
菊「この際、はっきりさせてもらいませんか」
アーサー「…は?別に今じゃなくても__」
菊「今じゃなきゃ駄目なんです。貴方だって、長く一緒に居たいんでしょう?私もです。私だってヤキモチぐらい妬きますし、貴方とこんな風に気まずい関係でいたくありません。」
心夏「はっきり…って?」
アーサー「そうだな、じゃ、はっきりさせようじゃねえか。」
心夏「えっ え、だから、はっきりって…なにを…?」
会話についていけないし、今日は初めて知ることが多すぎて頭がついていけない。
菊「心夏さん、貴女は誰が好きなんですか?」
心夏「え?」
誰が好き?