【ONE PIECE】僕に盲目になって【ローorキッド】
第1章 君の光を守りたい二ヶ月間
「わっ…!」
向かう先を考えていると、不意に肩へ衝撃を受け付けた。
小さく聞こえたその声は、間違い無く女のもので。見下ろした足下には、その声の主と思われる転ぶ一人の女。と、買い物籠から溢れる野菜や果物の数々。
「…あァ?」
「ごめんなさい…!その、躓いて…!」
無視して、足を進めようとした。
それなのにその女が取った行動は、立ち上がることなく俺の靴を白く小さな手で掴んだのだ。
「っ…!何なんだテメェは!ぶっ殺されてェのか!」
「うわ!ご、ごめんなさい…!間違え、ました…!」
「はァ!?」
「お、落とした物を…!拾おうとして……!」
カッと頭に血が昇った勢いで地面に片膝を着き、細い手首を乱暴に掴めば慌てて顔を上げる女と目が合った。
「…………」
「あの…本当に、ごめんなさい…」
「……………………」
「あの……」
言ってしまえば、綺麗な女だった。
肌は、透き通るような淡い色で、長い髪は緩く癖があり色っぽい。
何よりも、零れてしまいそうな程大きな瞳は泣いている訳でもないのに潤いを含み輝いていて、吸い込まれそうだ。それでも少し目尻が切れ長でそれに沿って生える色濃い睫毛は凛々しい印象を与え、簡単に吸い込まれるのを赦してはくれなさそうな魔性の魅力もあった。
年齢は不詳だ。
雰囲気だけでいうなら、おれよりは少し上だろうか。
それとも、この瑞々しさは若さだろうか。
「……気を付けろ」
「は、はい!本当に…すみませんでした!」
ハッと我に返り、掴んでいた手を離す。
これからこの島で相手にする娼婦には、絶対に居ないような人種だ。所謂、住む世界が確実に違うとはっきり言える程の儚さと美しさ。
手が届かないなどと情けないことは思わないが、あまりに綺麗な存在を己が関わっただけで汚してしまうというのはここまで無関係の人間だと余り良い気はしない。というより、そこまでして関わることへ縋るのはプライドに触れるのだ。