【ONE PIECE】僕に盲目になって【ローorキッド】
第1章 君の光を守りたい二ヶ月間
極悪非道な事件を繰り返せば、懸賞金は跳ね上がり。
殆どの上陸する島の住民は悪名高い海賊の足音がすると、悲鳴混じりに道を開けた。
羽織り直したコートといえば微かに血の匂いが香り、それすら悪の優越感におれ自身を浸らせ自然と口元は邪悪な笑みを浮かべる。
「キラー。もう、宿は貸し切ってンだろ」
「あァ」
「なら此処で一先ず解散だ。ログが溜まるまで二ヶ月。この金で女買うなり酒浴びるなりして好きに遊べ」
「子電伝虫は持ち歩けよ」
「わかってる」
渡した金は奪った金。
前の島で資産家をうまい事手玉に取りまたがっぽりと稼げた。
度重なる悪事に、金は湯水のように遣ったところで無くなることもなかったが、今回は長期の停泊ということもあり、いつもに増してクルーに配給するそれは大金だ。贅沢な二ヶ月間になるだろう。
「おれは先に出る。後は勝手にしろ」
「…あァ」
ストレートのウィスキーが入ったグラスを空にするなりカウンターに叩きつける。
そして幹部の仮面をした男に目を合わせる間も無く席を立てば、おれは酒屋を後にした。
「…いい風だ」
一人そんな事を口ずさむ街外れの場所は、程良く賑わい夕暮れの空の静けさを引き立てた。
昼間あれだけ上陸に騒いだ島の人間も、特に危害を加える気がないおれ達を見て見ぬ振りするしかないのだろう。
貸切る宿と酒場、その取引先の店にも余る程の金を置いてきた。
正義感だけではどうにもならない力の差をわかっているからなのか。殺生を避けたい弱者の欲は、ここまで強者がコントロールすることが出来るのだ。