【ONE PIECE】僕に盲目になって【ローorキッド】
第1章 君の光を守りたい二ヶ月間
無事に連絡が来るといい、なんて何処までも人が良いことを呟く声に、おれは聞こえない程度に短く返事をした。
* * *
「何か飲みますか?」
「…酒」
野菜と肉がたっぷり入ったクリームシチューは絶品だった。
皿を片す○○に向かって素直に美味かったと口にすれば、照れたような笑顔で喜ばれたのが擽ったくて顔を背けたのはわざとらしかっただろうか。
「キッドさん。お酒がもう無いので、買ってくるついでに島の様子を見てきたいと思います」
「…そこまでしなくていい」
「でも、仲間の方から連絡もありませんし…私ならいくらこの島をうろうろしても問題ありませんから」
「……これで、一番高ェウイスキーを二本貰ってこい。余った金で…お前の新しい服でも買え」
申し出は有難かった。
確かにキラーから連絡が入ることはあれから無く、気になり始めていた所だ。
○○の言うことは最もで、ここまで世話を掛けておいて今更変に拒む気も起きない。
おれは札束を懐から取り出すとテーブルに置いた。
「お、お金ならあります。それに…こんな大金…好きに遣えませんよ…」
「おれの金をどう遣おうがおれの勝手だ。貧乏人は黙ってろ」
「…わ、私の洋服…貧乏臭いですか…?」
「そこかよ!」
「あああ…もう、怒らないで下さいよ…!私、行ってきますから!ね!外に出ちゃ駄目ですよ!」
○○は慌ただしくおれの肩を宥めるように撫でると、ぶつぶつ文句を言いながら渡した金を持って家を出て行った。
あいつがすんなり金を受け取らないことは想定内だったが、それが面倒だと思っていた。
だが、案外ものわかりは良いのかもしれない。おれという人間を理解した上で、結果の変わらないことをすぐに悟り渋々ではあったものの口論に発展することは無かった。