第2章 合宿前日
「可愛いな…」
「東山先輩がマネージャーでほんと良かった…」
使い終わったタオルを洗濯しにいった桃を見送りながら、音駒排球部の部員は口々にに呟く。
東山桃
小柄で容姿端麗。
誰にでも同じように敬語という姿勢も崩さずに接する。
一生懸命で仕事も丁寧。
こんな桃は皆に好かれていた。
一方では妹のように。
一方では姉のように。
そして一方では、女性として。
しかし彼女の秘密を知るものは限られていた。
バレーボール好きな彼らは、彼女の二つ名を聞いたことがあるだろう。
でもそれも過去の話。
今、音駒のマネージャーであることなど誰も考えてもいない。
彼女が『王女』と呼ばれた存在であることを…。