第6章 鼓動のSerenade*菅原孝支√
「お疲れ様です。」
最後の最後まで全力で練習していた部員たちに桃は飲み物を配る。
「東山~、オレにも!」
菅原がねだってきたのにキュンとしながら、桃はドリンクを渡した。
(そっか、最後なんですね…)
こうやって梟谷グループが一緒に練習するのも次はいつになることやら。
しかも烏野は宮城にあるから、いつでも来られる訳ではない。
桃は、呆然とそんなことを思っていた。
(菅原さんに会えないのが辛いって思ってしまうのは私だけでしょうか…)
相手が自分を好きだと知っていても不安に思ってしまうのが乙女心。
(やっぱりこの気持ちは流されてなどではありません…!)
ボトルやタオルを洗ったり、バーベキューの準備をしていても、考えてしまうのは菅原のことだった。
「どうしましょう…」
「何が?」
「うわあっ!」
突然後ろから声をかけられた桃が飛び上がると、声をかけた清水も肩をビクリと揺らした。
「すみません!考えごとしていまして。」
「菅原のこと?」
図星をつかれた桃は咄嗟に言葉にできず、物凄い勢いで胸の前で手を振った。
(わかりやすいな…)
と清水が思っていることも知らずに。
「恋愛とかわからないけど。」
「…えっ」
恋愛の話になり、桃は息をのむ。
清水は気がつかなかったのか、それとも気がついていてあえてスルーしたのか、話を続けた。
「本当に好きって気持ちがあるなら、伝えた方がいいと思うよ。」
清水が優しく微笑む。
その言葉は桃の求めていた言葉だった。
(今日言わなきゃ…)
その言葉で、覚悟は出来た。
「ありがとうございます。」
桃は感謝を込めて、ゆっくりと頭を下げた。