第6章 鼓動のSerenade*菅原孝支√
「すが、わ…さん」
可愛らしい寝顔から可愛らしい声が聞こえる。
どうやら寝言のようだ。
「すが……さん、やさしい…です」
その寝言に菅原は目を見開いた。
(ほんとこれ、俺はどうすればいいの?!)
理性を保とうにも、冷静でいられる自分はもういなかった。
「ごめん、東山……俺さ、優しくなんかないよ…?」
体は本能のままに動く。
菅原はゆっくりと、
桃の口にキスを落とした。
「菅原さん…!」
それはもう寝言ではなかった。
すっかり起きた桃が目をパチパチとさせている。
「う、うわぁ?!?!」
飛び跳ねながら、菅原は桃から距離をとった。
「キスしちゃってごめん、ほんとごめん!!」
謝り倒してくる菅原に桃は「え、 」と声を上げた。
(キスされた……誰が………?
………私が?!)
「私キスされたんですか?!」
まだ状況を理解していなかったものの、菅原の言葉でわかってしまった。
(あの時起きてなかったのか…!)
と後悔するももう遅い。
過ぎたことだし、何より事実なのだから。
「ほんとごめん…」
その場でうなだれるしか出来ない菅原。
(キス…?って、え?なんで菅原さんが……?)
状況は理解しても意味を理解してなかった桃の頭はグルグルと回る。
(初めてだったけど………私…嫌じゃ、ない?)
菅原にキスされたことにこそ驚いたものの、キスされたことに対しては満更でもない自分がいて。
初めてが菅原さんで良かった、なんて思う自分がいて。
鼓動をうるさくする自分がいて。
(私………)