第6章 鼓動のSerenade*菅原孝支√
「い、いいですよ…?」
「えっ!?」
顔を赤らめて言う桃の返事に、菅原の顔も赤く染まる。
「だって菅原さんが風邪なんて引いたらみんなが困りますし…」
恥ずかしさと闘う桃は視線を泳がせる。
「それに、菅原さんなら……いいですよ…?」
(なんてことを言っているんでしょう…?!)
「忘れてく「俺もいいよ。」…!?」
咄嗟に桃が叫ぼうとしたのを、菅原の声がやんわりと遮る。
「あ、え、えと………え?!」
再び言葉にならない声を発する桃に菅原はぶはっと吹き出した。
「俺だって東山に風邪ひかれたら困るし…本当にいいならだけどなっ!」
未だにクスクスと笑う菅原に桃の羞恥心はこの上なかったことは言うまでもない。
「ねぇ、ダメか…?」
いつの間にか近づいてきて、耳元で囁かれた少し甘い声に桃はただ「は、はい…」と言うことしか出来なかった。
(それにしても…これはマズいだろ……!)
隣からは規則正しい吐息が聞こえてくる。
寝始めた時はある程度の距離があった。
だが今は0距離。
すっかり夢の中である桃は、当初バレーボールを抱き枕にしていたのだが、今は何を勘違いしているのか菅原を抱き枕にしている。
(平常心…平常心……!)
そんなことを考えている時点で平常心では無い気がするが、今そのことは考えないでおく。
今考えるべきなのは、目の前の状況をどうするかだ。