第6章 鼓動のSerenade*菅原孝支√
「あ…え……!」
声にならない声を発し桃は跳び起きる。
「ごめんなさいっ!」
というとそのまま電気のスイッチの方へ進んだ。
一方菅原は
(今、どんな顔してたんだろ…)
この時の桃の表情を想像すると、思わず口元が緩んでしまうのだった。
パチッ
ようやくスイッチを見つけ周囲が明るく照らされる。
闇に慣れた二人の目はやけに眩しく感じた。
「やっぱり閉められてます。」
桃が目視で確認する。
いつの間にか側に来ていた菅原もガタガタとドアを揺らしてそれを確かめる。
「もう就寝時間なので誰かが外にいるとも考えづらいですね。」
こんな状況でも冷静に分析する桃に菅原は(さすが王女…)と思っていた。
王女と言われるのが嫌いな、大好きな彼女のために口にはしないが。
「今日はここで寝るしかないべ。」
しばらく後菅原は言った。
冗談のはずだった。
場を和ませるという諧謔心と、
桃が困っているところを見たいという悪戯心から出た言葉だ。
だが桃の返答は予想を大きく外れるものだった。