第6章 鼓動のSerenade*菅原孝支√
菅原は話した。
伊達高と戦った時、エースを頼りにしすぎたこと。
ドシャットされてトスを呼んでくれなくなったこと。
自分のせいで東峰と西谷が部活に来られなくなったこと。
そんな時に、影山という圧倒的才能が来たこと。
そして、それをいいことに逃げてしまったこと。
「…って訳なんだ。」
桃は黙って聞いていた。
「東山とは全然違うかもしれないけどそれでも逃げたことには変わりない。」
前を向いていた視線が急に桃の方に向く。
ドキンと心臓が高鳴る。
「でも、おれは今バレーをやってる。」
もう一度菅原の視線が前を向く。
力強い視線だった。
「逃げ出しても、戻ればいい。…東山も出来るよ、また。」
「っ!」
視線が交わり、そのまま見つめ合う。
2人の鼓動が早まっていく。
「ありがとうございます…!」
桃が優しく微笑む。
(話してくれて…励まそうとしてくれて…)
そのありがとうには色々な意味が込められていた。
菅原はその顔を見て、さっと目をそらせた。
その顔は仄かに赤くなっていた。