第6章 鼓動のSerenade*菅原孝支√
桃は答えないことが逆に心配かけるように感じた。
「じゃあ少しだけ……」
そこからポツリポツリと話し出した。
「菅原さんが考えていることはだいたい合っていると思いますよ。
もう知っていると思いますが、私は人の目が気になりやすくて、注目を浴びるのが苦手なんです。
それでも皆さんの力で中体連を勝ち抜くことが出来ました。
それなのに…私だけ『王女』なんて大それた名前で呼ばれ…
そして逃げたんです。
耐えられなくなって…」
「まあ他にも理由はあるんですけどね。」と付け足すと、苦笑いを浮かべた。
「でもバレーからは離れられなくてマネージャーに。ごめんなさい、こんな見苦しい話を聞かせてしまって…」
「うんん、むしろ東山について知れて良かったよ。」
菅原の優しい微笑みを見て、涙が出そうになった。
「ありがとうございました。」と一言お礼を言うと、顔を隠すようにして桃は菅原から離れた。
トクン トクン
確かな心臓の音が聞こえた。