第5章 意地悪なJoker*黒尾鉄朗√
「じょ、冗談ですか…?」
もしかしていつものようにからかわれてるだけかもと思った桃は告白を素直に受け取れなかった。
(クロが好きだから…冗談なんて嫌ですもん。)
「冗談なんかじゃねえ。俺は桃が好きだ…!」
(本当に?)
嬉しくって涙が溢れ出しそうだった。
「桃…」
黒尾の顔が近づいてくる。
桃はゆっくり目を閉じた。
(…?)
なかなかキスされず、不思議に思った桃が目を開ける。
黒尾が離れた位置にいるのが見えた。
「ごめん、桃。」
「え…っ」
(嘘…まさか…!)
からかわれただけと思った桃の体に羞恥心が広がる。
「クロの……クロのバカっ!」
その場から逃げるように走り出した。
「あいつがバカとか言うの初めてかもな…」
黒尾は乾いた笑いしかできなかった。
「一回キスしたら止まんなくなる…」
目を閉じる。
先ほどの桃の顔を思い出すように。
真っ赤な頬。潤んだ瞳。ギュッとつむいだ口。
(あいつを傷つけたくない…!あの時散々傷ついたんだ。俺の身勝手であいつを困らせるなんて、しちゃいけねぇっ!)
守ると決めたから。
あの時の決意は揺るがない。