第5章 意地悪なJoker*黒尾鉄朗√
違和感に気がついた黒尾が桃を抱きかかえる。
「ちょっ!クロ!何するんですか?!」
「何って…洗わなきゃいけないだろ。」
人混みを突っ切るように、黒尾がシャワーまで向かう。
「じ、自分で歩かせてくださいっ!」
「駄目だ。」
「っ!」
いきなり真剣な声になった黒尾に驚いて桃は肩を揺らす。
「お前、足痛めたんだろ。」
「バレました?」
事実を言い当てられ、桃が気まずそうにする。
「わかるに決まってる。お前の足、完治はしないんだろ。…無理すんな。」
「うん…」
心配してくれたことが嬉しくって桃は薄く笑みを浮かべた。
それはバレないように、黒尾の胸に顔を寄せた。
「にしても、桃。ドリンク被るとかベタすぎんだろ。」
「私だって、そう思いますけ…っ!」
いきなり頬がゾクゾクッとした感じがして桃は身をこわばらせる。
「甘い…」
その言葉で桃は、黒尾に自分の頬についていたドリンクをなめられたことを知った。
「~っ!クロ!やめてくださいっ!」
「そんな赤い顔で言われても説得力ないけど?」
ニヤニヤと笑う黒尾を少し恨めしく思う桃だった。