第5章 意地悪なJoker*黒尾鉄朗√
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休憩時間といえど、マネージャーの仕事は多い。
桃は次のためのドリンクを運んでいた。
そこまでは良かった。
「あ、」
そう、つまづくまでは。
「きゃっ!」
見事に滑った桃はそのまま倒れる。
不幸なことに、蓋がきちんと閉まっていなかったボトルからドリンクが舞い、それまた見事に桃にかかった。
声を聞きつけた人々が「なんかあったのか?」と集まってくる。
そしてそれを見てしまった男は、硬直した。
「ベタベタします…」
(エロい…)
少し涙目でびしょびしょに濡れた女子。
年頃の男子には直視しづらい姿だった。
「立てるか?」
遅れてやってきた黒尾が桃に話しかける。
少し苦笑いしながら。
(何でクロは笑ってるんでしょう?)
桃が不思議そうな顔をしていると、黒尾は呆れたようにため息をついた。
「なーんで、桃さんはそんなエロい姿で平然としてるんですかー?」
黒い笑みを見て、桃は自分の置かれている状況に気がついた。
「別に、そんなことな…っ!いっ!」
急いで立ち上がろうとした桃だったが、それは叶わなかった。