第3章 運命の始まり
ラインから数歩下がる。
(サーブを打つのはあの時以来ですか……?!)
あの時から長い時間が経ってしまったなぁと口元が少し緩んだように桃は感じる。
心臓はトクン トクンと穏やかに脈打つ。
緊張感に包まれたあの時とは違う。
(あの時の緊張感は忘れないんですね…)
今と当時を比べるとそんな風に思えるのだった。
「いきます…!」
確信的か無意識かはわからない。
それでも呟かれたあの時と同じ言葉。
ボールは高く舞う。
桃はそこに向かって跳躍する。
ジャンプサーブ。
ボールは吸い寄せられるように綺麗に手のひらに当たる。
そして吸い込まれるように、相手コートの真ん中に落ちた。
「う、わ……!」
そのブランクを感じさせない美しいサーブに見た人全員が息をのんだ。