第2章 合宿前日
(あの高ぶりを、あの頂をもう一度味わえるのなら……!)
高揚感を思い出した彼女はそんなことを思った。
思ってしまった。
(そんなの…無理、ですね。逃げた自分がそんなことを考えるのもおこがましい…!)
桃は落ちたボールを拾って、もう一度手の中で回すと、倉庫へ閉まった。
(あの頃はバレーボールを純粋に愛していた、そんな気がします。)
桃は目を細める。
遠い自分の過去を見るように。
(でも私は逃げた。だから戻れなくなってしまって当然です。自業自得です。…もう一度なんて……酷い話ですよね。)
自虐的な笑みを浮かべる。
(でも。)
(それでも私を許してくれるのなら…)
(私にもう一度……!)