第2章 合宿前日
そんな騒がしい部室とは違い、片づけ終わった体育館。
そこにはバレーボールを持った桃が1人佇んでいた。
「合宿か…」
バレーボールをクルクル回す。
彼女はバレーボール漬けになる合宿に期待と不安を併せ持っていた。
(バレーボールは好き……でも、真剣なみんなの側にいていいのでしょうか?)
去年の記憶が蘇る。
(みんなキラキラと輝いてて…
逃げた私には眩しすぎます。)
サーブトスのようにボールを投げる。
でもサーブを打つ気にはならず、ボールはそのまま落ちた。
(この場にいると、戻りたいと思ってしまう……そんなの出来るわけないのに…)
何度も見てきた頂の景色。
それが彼女の目に浮かぶ。
高校になってからも孤爪のトスを何度か打ったことはある。
(それでもあの高揚感は…ない)
あの眩しい場所に戻らなければ得られない高揚感。
それを思い出した彼女の身体は震えた。