第13章 君じゃなきゃ
「寒いか?」
「え?」
「震えてるだろ……お前。こっち、こい」
「でも、青峰濡れるよ」
「いいから……こいって」
両手を広げて、ここにこいと言わんばかり。どうしようか悩んだ末、意外と真剣な眼差しで見つめられていることに気付いたのでここは大人しく従うことにした。
「お前小さいな」
「煩いなぁ」
ぎゅっと後ろから抱きしめられる。心なしか暖かい気がした。安心する……。
「青峰、助けてくれてありがとう」
「あ?」
「来てくれなかったら……今頃、雨に打たれてやばかった」
「……黄瀬が戻ってきたのに、いつまで経ってもお前が戻らないからな。心配になっただけだよ」
「他の皆は?」
「雨が降ってきたから練習は中止。俺だけだよ、お前を探しに来たのは」
「どうして探しに行こうと思ったの?」
「はあ? ふっ、俺の野生の勘だよ」
「そういえば青峰の天気予報あたったもんね」
「まじ俺凄くね?」
自分で言わなきゃねぇ、と苦笑いを浮かべてやれば珍しく察した彼が「悪かったなぁ、自分で言って」とぶっきら棒に呟いた。
こんな雨の中、二人でいれば案外寂しくないもので……一人でいた時とは違って安心感もあり、なんだかんだそういう意味でも助けられたなぁと思いつつも。