第13章 君じゃなきゃ
「いたっ」
「あ、わりっ……。ちょっと触るだけでも痛いか? 病院行った方がいいな……」
「でもそんな大したことは……」
「馬鹿かお前! 怪我なんてしやがって……おぶってやるから乗れ」
「え……あ、青峰。おぶりながら崖とか、登れるの?」
「はあ? 俺を誰だと思ってんだか。俺に不可能はねぇよ」
半ば無理矢理彼の背に乗ると、彼は宣言通り崖を登っていく。そんな体力あるもんなんだと感心する反面、本当に大丈夫なのかという少しの不安。けれどそれさえも跳ね除けて、彼は難なく上った。
一度下ろされて、肩を見せろと言われて戸惑う。
「いや、えっと……それはちょっと」
「赤く腫れてるかもしれねぇだろ。ちょっとみせろ」
「……わかったよ」
大人しくすれば、強引に服を引っ張られ肩を見始める青峰。「やっぱ赤いな」とだけ呟けば手を離した。
「ちょっと雨が強くなってきたな。よし、あの洞窟で雨宿りするか」
「あ、青峰っ!?」
軽々とお姫様抱っこされて、二人で洞窟へと向かう。青峰っていつもふざけているイメージしかなかったけど、それは私の誤解だったかもしれない。ということを本人に告げたら怒りそうだね。
「ここで一先ず休むか……」
「そうだね」
雨は強くなる。先程より勢いは増して、止む気配が今はまだない。
二人だけの時間、異様な沈黙。それでも、肩を寄せ合い少しでも寒さを凌ぐ。濡れた体がどんどん冷たくなって、寒い。