第17章 番外編:01 受験準備
「はいはい、よしよし」
「頭撫でないで……もうっ」
「拗ねないで? 俺は別に、有栖ちんを貶したわけじゃないんだから」
「悪びれなくいうんだからずるいです!」
「俺が勉強教えてあげるよ?」
「……むっ」
わりと真剣な彼に、どきっとする。優しい眼差しなのに、何処か強引さも瞳の奥から垣間見えた気がして……何より、この自信に満ちた発言は何? よっぽど私の成績を上げる手段でもあるのか。
「有栖ちんってさ、普段はちゃんと考えればきっちり解ける問題も、いざ試験や受験になると緊張して失敗するタイプでしょ?」
「なんでわかったの!?」
「……なんとなく?」
敦君のことで、付き合って新しく一つわかったことがある。それは、私のことを私以上によく理解しており、そしてよく見ているということ。私が気付かないところを指摘し、改善へと導いてくれる。
とても普段の、のんびりお菓子ばかり食べているような人物には見えないけど。
「誠凛見てたの?」
「うん、誠凛近いし。偏差値もそこそこだから、私でも余裕!」
「……黒ちんがそこのパンフ見てたような気もする」
「え、そうなの? 黒子が誠凛か……高校に行っても馬鹿にされるとか勘弁だね」
「俺の知らないところで、有栖ちんと黒ちんが仲良くする方がもっと勘弁」
「え……?」
ぎろりと敦君に睨まれる。あ……あ、ああ……そ、そっか。私本当に何も考えてなかった。そっか、敦君は私が他の誰かと仲良くするのが面白くないわけだ……その。
「妬いてくれ、てるの?」
「俺さ」
「ん? うん」
「有栖ちんのこと、本気で好きなの」
「ん……んん!?」
「だからさ、俺と同じ学校行こう?」
「あ、敦君……?」
「嫌って言った分だけ、キスするし」
「敦君!!?」
私の手元から、陽泉以外のパンフレットが消え去ったのは、言うまでもありません。