第9章 乱されほだされて
結局私がいくら考えてみても、彼の本当の気持ちは彼にしかわからなくて……。だったら聞いてみよう、納得できるかは別として。
扉の前に立つと、異様に緊張するね。
「あの、敦君……いる?」
「……なに」
ワンテンポ遅れて、彼の声が聞こえてきた。よかった、本当に部屋にいた。
「少し話したいんだけど……駄目かな」
「……」
返事はない。どうしようか迷っていると。扉は開かれて敦君の姿がそこにあった。
「敦君?」
「入って」
意外にもあっさり通してくれたので、意を決して部屋の中へと足を踏み入れた。男子は部屋は合同みたいで三人三人で分かれているらしかったが、今は敦君だけだった。そっか、まだ皆練習中だったんだ。
「えっと、入れてくれてありがとね」
「別に……それで、話ってなに?」
「うん。あの、さっきのことなんだけど……」
「有栖ちんも、怒りにきたわけ?」
鋭い視線が私を射抜く。強張る表情を振り払いながら、聞いていいのかわからないまま言葉をかけた。