第9章 乱されほだされて
「何かあったか?」
「え……?」
「いや、赤司があんな怒鳴り声響かせるなんて、初めてだからよ」
「うんと……まぁ、うん」
「わり、聞いておいてあれだけど見てた」
「見てたのかよ、練習に集中しろよ」
「うるせぇ。気付いたらお前のこと目で追ってたんだよ」
何それ。顔を隠すそうに、アイスを食べる。奢ってもらったソフトクリームは、何の変哲もないソフトクリームなのにいつもより美味しく感じた。
「紫原ってさ、ガキだからさ……理屈で動いたりしねぇわけ。馬鹿じゃねぇはずなんだけど、なぁんか馬鹿なんだよな」
「青峰に馬鹿って言われて、彼も可哀想に」
「おい」
あはは、と笑えば青峰は乱暴に私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「思ったままの行動だったんだと思うぜ、悪いとか悪くないとか考えてなかったんだと思う。別にあいつを庇うってわけじゃねぇけどさ、とりあえずちゃんと話してすっきりさせとけよ」
「……うん」
「もやもやしてんの、嫌だろう?」
「うん。嫌」
「あと、たぶんお前が行かねぇとあいつも戻ってこなさそうだから。頼むわ」
「えっと……あり、がとう?」
「あいつなら部屋な」
そうして背を押され、そのままに私はもう一度彼に「ありがとう」と述べると、気持ち足早に彼の部屋へと向かった。