第8章 触れて離れて
「はぁっ……」
敦君が唇をようやく離すと、熱っぽい瞳が再び私を捉えて離さない。目を、逸らせない。
どうして? なんで、キスなんか……。彼の気持ちがわからない、乱れていく。彼の行動一つで、私自身の心が乱されて何を言えばいいのかわからなくて。だって、こんなの……初めて、だから。心臓がばくばくしてる、なにこれ……こんなの。
私には、わかんないよ……。
「顔赤い、有栖ちん可愛い」
「な……」
「敦っ!!」
突然聞こえた怒声に、私と敦君はその人物へと顔を向けた。
「征十郎……」
「どういう、つもりだ」
征十郎のあんなにも怒った顔を見たのは、生まれて初めてだった。